体力測定にまつわる思い出のはなし
市内某所のリサイクルショップで握力計を発見した。
(ぼくが公言している自分の「三大趣味」は ギターと読書、それから「リサイクルショップ巡り」だ。)
フンッと握ってみて出た結果は リンゴを握りつぶすのに必要とされている数字を 30kgほど下回るくらい。自己ベストには及ばない。
ただ、現役スポーツマン時代の記録への執念を捨てきれず、
誰もいないのに
「もッかいやらせてくれ!」 「もう一回やったらいい記録出ッからさ!」
と言い訳をしつつ、 つい、2回目に手が伸びる。
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中学・高校では一年ごとに体力測定をやったものだ。
とりわけ男子生徒の間では、 その結果で向こう一年間の「実力証明書」に影響するのだから、 たかが体力測定と侮ってはいられない。
1週間前には神社にお参りをし、 前日は験担ぎにトンカツを食べ、 万全のコンディションで望むべく 20時に寝るのは当たり前だ。
…無論、大ウソである。 ただ、妙な負けん気と緊張感はあった。
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歯をくいしばり、手首がおかしな方向を向くほどに 全力を込め、握力計を握る。
さぁ、(ライバルの)あいつの記録はッ?! …ナニ、オレよりも5kgも上回ったか!
「もッかいやらせてくれ!」 「もう一回やったらいい記録出ッからさ!」
…残念ながら、このテの勝負(?)は 疲労により1回目を上回る記録を出すのが非常に難しい。
はじめ奥歯を食いしばっていたのが、 終わってみて噛んでいるのは下唇である。
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握力計をそっと置き、帰ろうと振り返り、 目に入ったハンドグリップを、思わず握ってしまう。
(リサイクルショップは、たのしい☆)