災害ユートピアの一片を見た

 昨晩、帰宅途中に交通事故現場に立ち会った。僕は本来ならば事故を目撃したであろうタイミングでその交差点にいたのだが、音楽を聴きながらスマホを見ていたせいで全く気がつかなかった。同じく居合わせて事故の瞬間を目撃したおじさんに「(交差点で立ち往生している車を動かすのを)手伝ってくれ」と言われたので、「やりましょう」と快諾した。一台は自走できたものの、もう一台の当たりどころが悪く、自走できなかった。ここからがすごい。するとおじさんはポケットからライトを取り出し、警察が到着するまでの間、インスタントな交通整理を始めた。すると数分後に20歳前後の、同じく通りすがりの青年が現れ、持っていたホイッスルとバンダナを取り出し(二人とも、よくそんな便利グッズを携行しているもんだ!)、おじさんと共に交通整理を始めた。僕は「ちょっとこれ持ってて」と、その場を一時的に離れたおじさんに手渡されたライトをそのまま青年に渡し(僕がやるとむしろ事故が起こると思った)、その後は彼が交通整理を引き継いだ。僕はとりあえず当事者と安全な場所に移り、保険会社への連絡を手伝い、あとは警察に引き継げるまでその場に「居た」。道路の処理がひと段落ついてあとは事情聴取、というころで、なぜか(ちょっと増しで言えば)現場は見ず知らずの人の集まりにもかかわらず、連帯感と笑顔と感謝で満ちていた。僕はそこに「災害ユートピア」の一片を見た。