「ワケあり品」のはなし
「ワケあってこそ、『ぼくが持っている理由』になる。 ワケありの中古品をリサイクルショップで見つけたら、 そのとき買うことにしよう」
そう結論づけて、 ぼくはニトリのコーヒーケトルを棚にもどした。
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ぼくは自称・コーヒー愛好家だ。 さらに言えば、「コーヒーを淹れる」という行為が 「飲む」から独立した楽しみとして存在している。
「美味しく」ではなく、 (自分が)「楽しく」コーヒーを淹れるために、 口のキュるッと曲がったケトルを欲する気持ちが、
「イオン」でも、「ホーマック」でも、 「トライアル」でも、もちろん「ニトリ」でも、 どこへ行ってもつきまとっては、
ただケトルを眺めて時間を浪費し、 しかし買うに至らなかった。
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ちょっと話が逸れるが、 ぼくは趣味を「リサイクルショップ巡り」と公言している。
ワケあって、もとの持ち主に使われなくなった モノたちが集まっている場所としてのそれは 例えるなら「敗者復活戦」の場。
品質保証・大量販売の新品とは違って、 「ワケあり中古品」は自分とモノの、 一対一の対話だ。
「ぼくは、こいつの持っている 新品市場で出回ることのできない『ワケ』と、 安く売られる『ワケ』を愛することができるか?」
それをクリアした暁には、
「(他の人のお眼鏡にはかなわなかったが、) やっぱり、ぼくが持っている理由」
みたいな感覚が降ってきて、それが愛着になる。 ちょっとの不便を含め、 より一層、そのモノを使う楽しみが出てくる。 (と、思い込んでいる)
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新品だけど、目の前の安物のケトルには あんまり愛着が持てそうになかった。
それが感覚として腑に落ちたので、 ぼくはサッと「ニトリ」を後にして、
「ハードオフ」に向かった。
前に見つけて、 「今度あったら買おう!」と思っていた 変な形だが使えそうなガラスのコーヒーサーバーは、 既に誰かに買われてしまっていた。
(く)(や)(し)(い)(ハート)