「プライドは捨てましょうね」とな?―入来智 元投手の話―

先日、かつてプロ野球界を湧かせた入来智元投手のドキュメンタリー番組を見た。 入来智 転職10回!!! 引退後の苦悩の日々 プロ野球選手の妻たち

入来の妻の兄が経営する弁当屋でバイトをしていたときのこと。 入来は同じく弁当屋で働く妻の母に指導され、細かい点を指摘されていた。 「何でお前の母ちゃんに色々いわれなければいけないのか!?」 憤慨した入来はその弁当屋を辞めてしまった。そんなことがその後も続いた。

ざっくり言うと… 「プロ野球引退後も、元プロ野球選手というプライドが邪魔をして、定職につけず負け人生を歩んでいる」 みたいな内容だった。僕はそういう内容に対して強い違和感を覚えた。

強いプライドを持っていたからこその全盛期・入来だったのではないか? そしておそらく彼の場合、「勝ち方」が普通のサラリーマンとは違っていて、 引退してもなお「入来」であることを活かすことこそ入来の「勝ち方」だったのではないか?

僕がプロ野球に興味を持ち始めたときにはすでに入来智投手は表舞台から消えていた。 かつてはスワローズのリーグ優勝の立役者だった名投手も、 故障が続いた結果、ついに戦力外通告を受けてしまったという。

プロとしての人生は断たれたとしても、元スター投手であったからには、 そこにたどり着くまでの経験やノウハウはなくならないはず。 それをたとえプロ野球の指導者という立場でなくても、 好きだった野球を愛する未来のスターたちのために活かすとか。 その他、あくまで「入来」の名前(とそのバックグラウンド)が活きる方法を・・・! そうなれば、きっと入来は自分の仕事に人一倍誇りを持ってやれるのではないか、と。

…僕のイマジネーションの乏しいことと言ったら。笑

ただし、これだけは言いたい。 「プライドを引きずって落ちこぼれた。だから、プライドは捨てましょうね。笑」的な あまりにもありふれた切り取り方、平均化につなげるような教訓めいた報道は非常に残念に思えた。

現在はその弁当屋に再就職したというが、 その後どうなるかはまだまだ分からない。いつかまた名投手・入来が、 形はどうあれ、一従業員としてではなく、「入来」として第3の人生を歩み始めることを僕はひそかに願っている。