僕たちは、「静かな、新しい競争」の中にいる
いわゆる「ゆとり世代」である僕たちは「ナンバーワンよりオンリーワン」の 「世界で一つだけの花」ムーブメントを本気で信じている世代として しばしば槍玉にあげられる。
ただ競争を避けてオンリーワンを目指していれば 安心していられるかというとそうでもない。なぜなら僕たちの間でも 静かな、新しい競争が始まっているからだ。
それは「『自分のやりたいこと』(というもの)をどれだけやれているか」 という競争。
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下の汚い絵を見ていただきたい。
「実況パワフルプロ野球」シリーズでお馴染みの「パワプロくん」(左)と その親友である「矢部くん」(右)が何やらやりとりをしているようだ。
(イラスト上段)
パ)オレはこの絵を描いた!今から色を塗って完成させるぞー!
矢)オイラのはこれでやんす。どんな色を塗ろうかなー?でやんす!
(イラスト下段)
矢)やったー!オイラはもう9割は塗り終えたでやんすー!
パワプロくんはまだ半分も塗れてないでやんすね・・・
余裕があったからオイラ、新しい絵を描いちゃったでやんすー!
パ)矢部くんはあんなに進んでいるのにオレは全然塗れてないや・・・
しかも形も単純だし・・・トホホ・・・
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ここでは「描いた絵=『やりたいこと』」
「どれだけ色を塗れたか=どれだけ達成したか」
というように例えてある。注目していただきたいのが、 それぞれ違う形の絵を、それぞれのサイズで、 それぞれの色(イラストでは黒だけど)で、それぞれの早さで、 塗っていくのにも関わらず、
「今塗れている割合%」や「描いた絵の数」 という無理矢理作られた同じモノサシで測ろうとしている点だ。
そういう意識が競争のもとになりつつある。 「色を塗った割合」だけならまだいい。そこには
「塗るための絵(『やりたいこと』)がなくてはならない」
という前提があり、それもまた若い人たちにとってはプレッシャーである。 しかも僕たちは自分で新しい絵を描いては塗って、描いては塗って、を
繰り返さなければおちおち生きてもいられないと刷り込まれているから なおさらだ。
もちろん、それが本当かどうかは未来にならないとわからないけれど、
その未来に備えて、「ベスト」を尽くさなかったことを後悔しないように 今のうちに描ける「絵」は描いておかなければならない、
そんな気持ちに苛まれている。
僕たちはそういう「静かな、新しい競争」のなかに身をおくことで、
自分にせっせと「絵を描き、塗る」ように尻を叩いているのかもしれない。