今ぼくにできること

少年は公園でギターを抱えた青年を見かけた。 だが様子が少しおかしい。 近寄ってみると、ギターの弦が2, 3本切れていて、 青年はせかせかと弦を交換している。

「いったいどんな激しいプレイをしたのだろう?」 そんな風に疑問に思いながらも、少年は青年に声をかけた。

「あのー、僕にお手伝いできることありませんか?」

すると青年は「あ、一人でやるからいいよ」と返した。 当然だ。通りすがりの人に大事なギターを任せる人はそういない。 それに少年自身も声をかけたはいいものの、 ギターなんて触ったことがなかったから、 弦の交換の仕方なんてそもそも分からなかった。

でも少年はなんとか青年の力になりたかった。

しかしギターのことに関しては少年は全くの無知だった。

少年は青年の回りに切れた弦が散らかっているのにふと気がついた。 「あ、この切れた弦片付けときますね!」

弦をゴミ箱に捨てて戻って来た少年は、 青年が弦の切れ端で指を刺してしまったのか、 指から血が出ているのに気がついた。 「あ、僕絆創膏持ってます!これ使ってください!」

(そういえば、この人は意外とてこずっているな・・・) 気がつけばもう20分ほど弦と格闘している・・・) 「よかったら飲み物でも買ってきますね!疲れるでしょう」

しばらくして、青年はようやく弦を張り終えたようだ。 青年は新しい弦のきらびやかな音を聞いて嬉しそうだ。 少年は、その後、青年の演奏にすっかり聞き入っていた。 そんな少年の姿を見て、青年はさらにやる気になった。。

「ありがとう」 青年が演奏後ぽつりと呟くと、少年は心の中で 「僕も少しは役に立てたかな?」と満足げに帰っていった。