「アンタの英語、ヤバいね笑」―セイン先生のキャッチ力―

デイビッド・セインという名前、 英語学習に関心のある人は一度は目にしたことがあるはず。 『その英語、ネイティブにはこう聞こえます』(主婦の友社) シリーズで有名な英会話教師である。

・・・と言っておきながら著書を読んだわけではないのだが 著書を読まなくても「スゴイ!」と思わせるポイントがある。 それは、(おそらくとりわけ日本人に対する)キャッチ力だ。

彼の著書のタイトルをいくつか並べてみよう。

『その英語、ネイティブはカチンときます』

『その英語、ネイティブはハラハラします』

『その英語、ネイティブは笑ってます』

『教科書、辞書のその英語、ネイティブはもう使いません』

『まるで無神経な英語』

『使ってはいけない英語』

これだけ見て、どれかのタイトルを手に取らずにいられようか?

日本人というのは少なからず「英語」というものに対する コンプレックスを持っている。 しかも「ネイティブ」というのは間違いなく権威ワードだ。 さらに、「間違い=失礼」という日本人の心理を鋭く突いている。

話はちょっと変わって。

僕は最近、片道30分ほどの蔵に平日毎朝車で通っている。 その時間「Hapa英会話」というpodcast番組を聞きながら ひたすらシャドーイングしているのだが、その講師である ジュン・セニサック先生は自身の日本語習得について こんなことを言っていた。

I had made tons of mistakes. 「私はこれまで(日本語習得にあたって) 数え切れないほどの間違いをしてきました」 (このtons ofという表現が非常に僕の印象に残っている)

そして、こんなことも加えて話していた。

「間違いが良いとか悪いとかの問題ではなく、 間違いながらでないと覚えられないのです。」 (⇒これは他のことにも効きそうな教訓だ。)

「一番大事なのは正しい英語を使うことではなく、 とにかく伝わること(to be understood)です。」

・・・そう、実際には英語を話すことにおいて 間違いは悪いことじゃないはず。というか避けられない。 セイン先生だって、きっと自身の本なり講座では そういうことを言っているに違いない。 何より、本の売れ行きや講座の人気を見るだけでも その良さが想像できる。

だけど、あくまでキャッチの上では 「アンタの英語、マジウケるんですけど」 「アンタの英語、ヤバいねwww」的な ニュアンスをチラつかせているところが、 ニクいな~と思いながらもウマいなぁと思ってしまう。