この酒、パイナップルの香りがしますね!?

よくその香りが「フルーティ」と形容される日本酒。 そこにはちゃんと科学的(化学的)根拠がある。

僕の勤める蔵の酒造シーズンはもう終わってしまったが、 しぼった酒の「火入れ」(品質安定化のための加熱処理)は まだ続いている。

先日、「火入れ」の作業をしていたときのこと。 巨大なタンクのフタをずらして中を覗くと、 立ち上る湯気とアルコールにむせてしまったが、 (温められている酒だからしょうがない) 果物のような香りを確かに感じることができた。 僕はふとその香りから無意識にパイナップルを連想した。

その他、日本酒の香りはしばしばリンゴやバナナにも 例えられることが多い。

実は日本酒の酒の香りには、 それらの果物の香りと同じ成分が含まれているのだ。

専門用語を使うと、 バナナの香り成分「酢酸イソアミル」や リンゴの香り成分「カプロン酸エチル」、 それから、パイナップルの香り成分「酪酸エチル」などがある。

日本酒にはこれらが様々なバランスで含まれているから、 フルーツのような香りがするのだ。

さらに言えば、これらの成分は主に酵母菌という微生物が 発酵の過程で生み出すもの。 酒造りに使われる酵母にはいくつかの種類があって 使用されている酵母が違えば、また香りも違ってくる。

そういえば2年前のこの時期、東京で開かれた 「松みどり」で有名な「中澤酒造」のイベントで 乾杯で飲んだ日本酒は、ビックリするくらい パイナップルの香りがしたことを思い出した。