プレミアム志向も廃れる

「いいものを、高く売るor買う」という「プレミアム志向」。 価格競争からの脱却と、品質の良さを訴えることで 消費者の意欲を刺激する、という戦略がとられてきた。

こだわった雑貨や食器から食べ物、飲み物だけでなく、 どこのスーパーにでも並んでいるような缶コーヒーや スイーツまで。

個人的な感覚からすると、そういった「プレミアム志向」も そう遠くない未来には廃れると思っている。

まず、僕たちの世代はまず親世代よりも高収入が見込めない。 というのも、親世代が経済的には豊か過ぎたのだ。 それに、今の社会は雇用においても制度においても 「高齢者を長生きさせよう」という方向を向いている。

それに、よく言われるように今の若い世代は モノの消費よりもコトの消費へとシフトしている。

僕は、これからどんどんお金を遣わない「ゲーム」のプレイヤーが 増えていくようにも思っている。 お金を遣わないでどれだけ楽しいことができるかというゲーム。 これと深い関わりがあるのがウェブを通じた「シェア」の文化。

高いお金とサービスの交換ではなく、 楽しいことをお互いに交換し合う。 ヒッチハイクとかバックパッカーとか、 僕はやったことないけれどそれもその類。 ルームシェアや、小規模なイベントもそう。 ちょっとFacebookで友達に呼びかければいい。 そうして生み出した楽しいことはどんどんSNSで広められていく。

旅行に行こうと思ってもホテルを予約することなんか考えない。 SNSで「○月○日、○○へ行くんですが、泊めてくれませんか?」 と打ち込めば泊めてくれる人が現れるかもしれない。 直接近しい友人に声をかけてもOK。

もう高いお金を払って高い質のサービスを受けたり、 高い質のモノを手に入れたりしなくてもいい。 出来ることなら友達と一緒に、手作りで。 ちょっと拙くても、手作りのプロセスを一緒に楽しむ。 そして、そういったプロセスを楽しいと思えるくらいには 若い人の心は豊か。

ひとりじゃ持ち切れない楽しい時間、リソースを 友達と分け合えば、お金をかけずに楽しいことができる。 そういう方法も、ちょっと検索すればすぐに出てくる。

食べ物、飲み物には粗悪品というものももうほとんどない。 品質、品質といって高価格を設定するのそろそろ限界だと思う。

そうと分かってしまった今、メリハリ消費を狙った 「プレミアム志向」も下降に入っている。 特に、持続不可能な楽しみである嗜好品の分野では。

となると、僕たちが造っている日本酒の高級志向は もはや日本の若い人たち向けではなくなってしまうことを 認めてしまう、というジレンマも抱えることになる。

↓この記事のインスピレーションを与えてくれた本