若い人は「日本酒でチョイ飲みしよう」に行きつくか?

「じゃあ今日は日本酒でチョイ飲みでもしようか」 どんなときにそう思うかと言われれば、そんなのその日のフィーリング次第、としか言いようがない。 そしてそういうフィーリングが心の内から湧いてくるには、 そもそも「日本酒は美味しい!」という回路のスイッチが頭の中でオンになっていないといけない。 ビールも同じですよね。

自分が酒造りの現場にいて、ますます若い人と日本酒の関係について関心が出てきた。

「若者の~離れ」が取り上げられるたび、ほぼ毎度「アルコール離れ」「日本酒離れ」があがる。 若い人に限らず、今の人たちはネットを通じて何でもできる。 買い物もできるし、映画も見られる。直接会わなくとも友達とやり取りもできる。 もちろんそれだけじゃないが、とにかく楽しみの選択肢が多い。 その莫大な種類の楽しみの中から「酒を飲む」というのが選ばれるハードルは、 ネットが発達する以前に比べて、とても高くなった。

その高いハードルを越えて「日本酒を飲む」というのが選ばれても、 そのとき飲んだ酒が美味しいと思えなかったらガッカリである。 これまでも、フタを空けた酒が美味しくなかった(厳密には、口に合わなかった)ということがよくあった。

日本酒は、量を考えると実は決して高価なものではないのだが、 もし、買った酒が自分の口に合わないものだったら、 ほとんど中身の減っていない瓶を見つめてなんだかむなしい気分になるだろう(実際になったことがある)。 もちろん、美味しい!と思う一本を買うことができて家でルンルンになることもある。

「酒を飲む」ことが選ばれるハードルが高くなったからこそ、 飲んだ酒は間違いなく美味しくなければならない(その人の口に合わなければいけない)し、 下手をすればその人の頭の中で「日本酒は美味しくない」という回路が入ってしまうかもしれない。 そして、できるだけ多くの人のはじめて買う日本酒が「美味しい」ものであるために、 是非、各蔵元ショップ以外でも試飲して買う、というスタイルが主流になればな、と思う。

いや、それ以前に、「日本酒を飲む」ことが数ある楽しみの中から選ばれないといけない。 若い人たちがネットで余暇の過ごし方を検索したときに、 「なんだかオシャレ!」だったり「なんかクール!」というフィーリングに訴えるような、 日本酒のあるシーンを、こちらから提案する必要がある。まだまだ潜在的なものだから。 (日本酒が美味しい、というのはこの場合次のステップなのだ)

とにかく、若い人の関心を日本酒に向けるハードルはかなり高い。 ただ酒造りのストーリーを語ってもダメ。おいしいよ、と言うだけでもダメ。 ライバルは他の酒蔵でもなく、ビールでも発泡酒でもチューハイでもなく、他の娯楽なのだから。 ・・・と、勝手に思っている。エヘヘ。